辰野町は地域スモールビジネス起業を応援する環境を整えている町
先日長野県の辰野町に行ってきました。伊那谷の入り口にある辰野町。ここは町として地域スモールビジネス起業を応援しています。「田舎でのんびり起業」を目指す僕としても参考になる町でした。
かつて辰野町は諏訪と塩尻をつなぐ交通の要衝でした。高速道路の開通や鉄道路線の変更もあって賑わいも落ち着き、今はのどかな田舎町になっています。ですが辰野町は地域スモールビジネス起業を応援することで再び町を元気にしようとしているのです。
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辰野町は街・里山・文化が揃った暮らしやすい町
辰野町は長野県のほぼ真ん中に位置します。中信といわれる松本・塩尻エリアからほど近く、観光地である諏訪湖からもアクセスしやすい場所です。また南信といわれる伊那谷の北端にあり、伊那・駒ヶ根とも繋がりが深い地域です。
駅前には商店街があり、ちょっと車で動けばほたる祭りも開催される里山エリアがあります。また旧宿場町には酒蔵や古い建物が並び文化を感じさせるエリアもあります。近くの都市へもすぐ出かけられ、普段は豊かな自然に囲まれている。そんな暮らしやすい町です。
かつての辰野町は交通の要衝で賑わっていた
実は辰野町は交通の要衝だったそうです。古くは初期中山道の宿場町もありました。また中央本線も塩尻にトンネルができるまでは岡谷から辰野経由で塩尻・松本へつながっていて、かつては特急あずさも辰野に停車していました。
当時の辰野駅前には旅行客向けの歓楽街もあったそうです。しかしその後トンネルが開通。岡谷から直接塩尻へと路線が変更され、辰野は支線のローカル駅となってしまいました。
今でも辰野町には魅力がいっぱい
鉄道や道路の幹線から外れ、かつての賑わいはなくなったものの、それがかえっていい落ち着き感を作っています。
辰野町の地酒「夜明け前」は僕もお気に入りの銘酒。伊那谷には美味しい地酒が多いのですがその中でも特にお気に入りです。町の居酒屋でもこの「夜明け前」は味わえるので訪問したらぜひ試してみてください。
他にも日本最大の茅葺き屋根の温泉施設もあります。ここは宿泊もでき、立派な能舞台もあります。音楽イベント開催の実績もあるのだそう。森の中の能舞台でフェスなんて素敵ですよね。
町が地域スモールビジネス起業を応援している
辰野町のおもしろい点は町が地域スモールビジネス起業を応援していることです。他の田舎町と同様に辰野の駅前もシャッター商店街。空き店舗も増えています。でも歩いていると、飛地のようにところどころ新しいお店が入っています。
これが辰野町の「トビチ商店街」。古い店舗の味を活かしたリノベーション店舗で、小商い起業を応援する仕組みなんです。
「小商い」起業を商店街の再活性化で後押しする
「トビチ商店街」は辰野町の事業家が手掛けています。空き店舗をリノベーションし、中を細かく区分けしています。シェアキッチンとしても利用でき、複数の店舗が営業できるようになっています。
辰野町の「小商い」起業は小さな売上から試してみるスタイル。いきなり大きな店舗の家賃を固定費として負担するのはハードルが高いものです。そこでこのように小さく区分することで複数事業者が少額で開業できるようになっています。
利用者の目線でもいろんなお店を巡れるので楽しいですよね。
小商い起業を応援するプログラムが地域の人を元気にする
さらに辰野町では「小商い」起業を応援するプログラムも提供しています。複数回の講座で起業できるようにする「小商いヤッテミレバ」というプログラムです。
実際に受講者がハンドクラフトや飲食で「小商い」起業できるよう卒業記念のマルシェも開催。リアルなビジネス体験もできるようになっています。起業支援の講座プログラムはいろんな地域で実践されていますが、卒業記念マルシェとセットにしていることで実際の事業体験もできるのがいいですね。
空き店舗はアート系起業との相性もいい
「小商いヤッテミレバ」の講師を務めたのは辰野町近くの上諏訪町の起業家。地理的にも環境的にも近い地域で連携して起業支援を進めています。
この講師を務めた人の話も聞くことができました。興味深かったのは上諏訪でも辰野でもアート系起業家による空き店舗利用があるという話。アート系起業家は工房やアトリエとして広い空間が必要です。空き店舗はそれなりの広さを安い家賃で借りられるので駆け出しのアート系起業家にとって魅力的なのだそうです。
一方で大成功を手にしたアート系起業家は山あいに広いアトリエを作ってしまうのだそう。つまり空き店舗には成功を目指しているアート系起業家の卵が集まるわけです。
これって素敵なことですよね。漫画のトキワ荘や音楽・演劇での下北沢みたいな感じです。辰野町や上諏訪町がアート系起業を始める聖地になれば素晴らしいですよね。
辰野町は「田舎でのんびり起業」を数多く生み出す町だった
今回辰野町を訪れて実感したのは「田舎でのんびり起業」(辰野町では「小商い起業」と呼んでいる)を生み出す仕組みを整えていることです。起業支援の講座やコワーキングスペースを整えている地域はたくさんあります。ですが講座だけでなく、卒業記念となるイベント、実際に実験的に出店できる「トビチ商店街」というインフラ。
これらが揃っていることで小商い起業のハードルを下げることができます。講座受講者仲間と一緒に起業できることで心理的ハードルを下げられます。またマルシェで小さな区分で実験的に出店できるので実践的ハードルも下げられます。これらのハードルを下げることでたくさんの小商い起業家が生まれています。
いきなりご立派なベンチャーやスタートアップ起業を求めても、それを誘致するのは難しいもの。それよりはむしろ小商い起業が数多く生まれることで結果的にベンチャーやスタートアップも生まれてくるのだと思います。
地域のスポーツが盛んなエリアにプロスポーツが育つように、草の根起業が数多く生まれる地域こそが事業が育つのだと思いました。
TMRの地域関係人口創出についてはこちらも参照してください。